熟成肉(牛) マンガリッツァ豚 仔羊 羊 鹿 鴨
こんにちは。ローストホースに行きたいです。
今回は説明すると長いのですがざっくりいうと、
・とある会社の案件が破滅したので僕経由で知人各位に手伝ってもらった
・そしたら3万円もらった
・山分けとかだるいし肉やりましょう。でもどこで?
・僕「厨房貸して?」 人「いいよ?」
・プロ厨房使えるなら熟成肉についても知見を深めましょう
・だるま氏こないだ長野行けなかったし呼ぼう
・はい
という感じです。本来であれば遅れに遅れた原稿の納品日なのですが、前から予定をぶっこんでいたので関係各位にはダマで決行しました。本当にすいませんでした。
なので告知をします。MANGApixivという場所で寿司虚空編を再誕させてもらいました。最新回はさいはてと融合で32ページです。場所が存続しないとまたどこかに消えていくので、よろしくお願いします。
で、某所某店某厨房です。
画像左から、鹿ソトモモ、鹿ランプ、マンガリッツァ豚ロース、マトンのどっか(肩?)、です。他にあと鴨とかいました。仔羊もいると思います。いるの概念があります。メンツは6人で、肉の総重量は10kgらしいです。
人がマトンを掃除しています。くせえくせえ言ってたんですけど僕は気にならなかったです。かぐわしさの部類ですね。
はい
各種肉を常温に戻すことをしています。
手前に鴨がいます。まな板の上は僕が掃除をした鹿です。「好きにやっていいのよ」と料理人に言われるままに料理をやるという状況がプレッシャーになり(プロ作家から「ではここに好きな絵を描いていいよ」と言われるようなもんです)、無駄に丁寧にスジを除いています。
人が豚の上空から塩を振っています。今回はオーブンもあるので、いわゆるいつもの低温調理とオーブンでの低温ローストとの差異を見てみましょうみたいな感じですが、湯の低温調理肉(ややこしいな)は満腹のため皿にはならずベンチ入りです。ドンマイ。
鹿と豚が湯に浸かっています。今回は高温の湯が出る蛇口がないので久々の原始的な直接加熱です。御家庭だと中々かったるいのですが、このコンロが完全にやばく、死んじゃうよ!って量の火を噴きます。業務用はすごいですね。水温モリモリ上がるので手間としてはラクでした。
加熱中は肉が鍋底につかないよう手でジップロックを揺すりながら温度を測り、今回は湯温60℃目標にしました。画像は加熱中です。金属鍋なのと肉の容積が占める割合などの要因で、温度下がるのが結構早かったです。
人がマトンカレーを作っています。オーブンで加熱して取り出したところ。
人がラム肩のたたきを作り始めました。油を多目にひいて高温で表面をバリッと焼く、いわゆる揚げ焼きの浅いやつにするようです。奥のは鴨です。
フムー
続いて、僕も油をさらに多くさらに高温でやりました。その結果、条件を満たしたので燃えます。学校で習いましたね。
手元まで火が来る
しかしもっと戦えた気がします。火を恐れない気持ち
いい色
補色があると雰囲気が出ますね。
はい
これは鴨ですね。いつの間にか焼けていました。
鴨
いつの間にか焼けていた鹿、鴨、仔羊の叩き三種盛りです。各自適当に味つけて食ってました。柚子の皮が結構いい。
ところで、いま流行りの「低温とか熟成イケてる/いや危ないだろ」問題はすごい長くなるので、個人的にざっくりいうと「おれはこういうのが好きだけど、衛生的グレーに片足突っ込んでるので生暖かい目で見てください」という感じです。立場としては殴られたら負ける側です。手放しで推奨してるといつか誰か燃えて潮目変わりますね。現代は肉の可能性を拡張するのと肉の危険性を再認識するのとが同時に起こる時代で、それは表裏一体なので、各自やっていくことになります。自分の過去エントリでは散々推してるので、どうしたもんかな、、
長い話は、こちらのブログエントリがとても参考になります。
マンガリッツァ豚ロースの低温ローストです。オーブンとしては異様に低い温度で何℃か忘れましたが、だらだらと焼いていました。案外入るもんです。この仕上がりの感じだと極薄切りの方が噛みやすいですね。もしくはよく切れるナイフを使う。肉にすごく味があるので塩だけで充分うまいです。
湯で低温調理やった鹿を切っています。
おもむろに塩かなんか振ってもらってそのまま食います。皿がかっこいい。
はい
イモを揚げています。すると揚がるので、食べます
これはラムをオーブンでローストしたやつかな。クミン風味で変化がありました。やはりハーブ大事ですね。
マトンカレーにパクチーが乗っています。それっぽくてうまい。イモによく合います。
肉しか出さなかったら人が不安になったらしく、サラダが発生しました。あと撮ってないけどピクルスが箸休めとしてすごく良くて、これはそのうちピクルス自作についてエントリを上げると思います。ピクルスで肉が倍食える。
おもむろに今回のメイン、熟成牛Tボーン1.7kgです。かなり気持ちが入った肉なのと、調理難易度が未知(少なくとも充分に難しい)という点で気が抜けません。ヘタな仕事をしたら生産者に怒られてしまう。この時点でいわゆる熟成香がします。よくナッツの香りなんて言われるやつですが、実際ナッツです。くわえてミルクの濃い香りや、ほしぶどう、パン、粕漬けみたいな発酵系の香りもします。写真は軽く湯を使ったので表面が変色しています。
我々はどのようにしてこの肉を丁重に扱うべきか会議になり、手堅くオーブンで低温ローストのちフライパンで仕上げということになりました。画像はオーブンから出して芯温55℃の状態です。熟成香が熱で変化して更に強くなっており、嗅げばわかるんですが説明が難しいです。肉のテリーヌ作る際もこんな香りが出ると人が言ってました。
で、表面を強火で焼き付けるというか、脂身を焼ききっていくというか、そういうことをします。
これは揚げ焼きにするには少々ガタイがでかすぎるだろう、ということで、試食者にプレゼンしてから骨と肉を外すことにします。
こっち側はヒレです。
Tボーン解体なんかやったことないんですが、そもそも調免持ってないし、でもやってみることですね。
こっち側がサーロインです。いずれも脂肪の融点が高そうなので掃除をして、赤身部分で戦うことにします。
サーロインの一部を切り取って試食。すごい熟成香、ズブズブとした柔らかい歯ごたえ、余韻の長い味わいがあります。どうなんだということについてですが、「熟成肉でない肉とは明らかに一線を画す別の何かで、かなりうまい」です。掃除したスジを集めてしっかり目に焼いたやつもスジの割に噛み切れてうまかったです。というか「熟成肉」とか一言でざっくり括ろうとするとマサカリが飛んで来る世界なので、品種や個体や生育史や部位や熟成などの要素が色々あるという前提で、今回の出会いはこうだということです。
ヒレ
サーロイン
揚げ焼きしやすいようサーロインを分割します。
はい
はい
はい
やけました
ヒレは表面をごく軽く
よさげ
フム
フムー
熟成肉は結合水がどうのこうので、ドリップが非常に少ないです。休ませてもビショビショにならない。
はい
ヒレをこのサイズから切るのは初めてです。元々柔らかいですけどぷよぷよですね。
柔らかいので思い切り厚くしたほうが楽しい
これはもう塩だけで食べます。
はい
はい
うまいうまい
ヒレは完全に優勝しました。おめでとうございます。店での勉強会は今後も不定期にやっていくと思います。よかったですね。